Apple社のiPadは、2011年4−6月に、タブレット端末の世界市場で68%のシェアを誇った。ほかには、Google社のOS、Androidを搭載した端末が27%(この二つで95%)だから、かなりのシェアである。また、2011年8月のアメリカにおけるデータ通信量を見ると、タブレット端末の97.2%をiPadが占めていた。
付け加えておくと、AndroidはOSの提供であり、端末そのものは各メーカーが製造しているので、上の27%という数字は、それら全製品の合計である。それに対して、iPadは、OSから製品までAppleによって作られている一つの製品であるから、タブレット市場における優位性は、圧倒的なものだと言える。
すると、iPadのなにが素晴らしいのか、あるいは、ほかとなにがちがうのか、不思議になる。
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2010年、iPadのキャッチコピーとして、「魔法のようなデバイス」という表現が使われた。これは、面白い点だと思う。——Google率いるAndroidのタブレット端末では、しばしば「タブレットPC」ないし「スレートPC」といった呼称が見られる。それは、つまり、一種のPCという位置づけだ。
ここで、僕は、数年前の「ネットブック」ブームを思い出す。それは、小型のノートパソコンで、画面もキーボードも小さく、持ち運びに便利で安価だった。(あの「100円PC」と騒がれたもの)。ところが、ネットブックは、広報や店頭販売が盛んだったわりに、結局、流行らなかった。依然として、主流はノートパソコンであり、それが最適なサイズだったのだろう。
その点、現在の「タブレットPC」ブームは、かつての「ネットブック」ブームと同じように映る。結局、ふつうのノートパソコンが一番、使いやすいのではないか、と。
ところが、iPadは「PC」ではない。Appleは、iPadをパソコンの代替品として作り出してはいないし、そのように売り出してもいない。それは、公式のTV CMを見ればわかる。
これらを見るかぎり、Appleは、iPadを新しいライフスタイルを支援するものとして、提示している。けっして、簡易版PCや、iPhoneに代わる製品という位置づけではない。
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だから、iPadは「魔法のようなデバイス」と表現された。デジタル・デバイスの世界に、PCがあり、スマートフォンがあり、携帯音楽プレイヤーがあるように、iPadがある。それは、新しい「ジャンル」の創設に似ている。
こんな風に眺めると、どうしてiPadを「手に取ってみたくなる」のかわかる気がする。残念ながら、使ってみた感覚では「おもちゃ」のようで、機能がかなり制限されているが、コンセプトに惹かれるのだ。
実際に、iPadがライフスタイルを変えられるのか、また、iPadが支援しようとするライフスタイルが魅力的なのか、様子を見たい。