2014年5月24日土曜日

【ご報告】本のカフェ第5回@エスキス(札幌、円山)

2014年5月22日(木)19時ー21時半

 今回は、Cafe Esquisse(カフェ・エスキス)での2回目の開催でした。7人の参加者のみなさまとともに、2つのテーブルを囲んでこぢんまりとお話ししました。 


 一冊目は、大きなポップアップ絵本で、建築家ガウディの公園や家が飛び出します。ガウディはスペインのカタルーニャ地方生まれ。26歳のときにパリ万博で生涯のパトロン、グエルと出会い、バルセロナで高い評価を得てゆきます。後半生は熱心なクリスチャンとなり、事故で亡くなるまでサグラダ・ファミリア教会を造り続けました。紹介者の方が実物を見たときには、「天に向かって発掘しているような印象」を抱いたそうです。


 二冊目は、國分功一郎『暇と退屈の倫理学』。変わったタイトルの哲学書で、2011年に出版されてかなり評判になりました。全体は7章構成で、過去の哲学者たちの「暇」や「退屈」「幸福」に関する議論が取り上げられています。紹介者の方が一番おもしろかったと言うのは、遊牧と定住の話。昔、人間が遊牧していた頃は暇がなく、定住することで暇と退屈が生まれた、と。紹介されるのが哲学書のためか、大学のゼミのような雰囲気でした。


 三冊目は、最相葉月『セラピスト』。著者は心理の専門家ではなく、ジャーナリストとしてこの本を書いています。しかし、取材が綿密であることと、臨床心理を学んで大学院まで出られたとのことで、「商品」としてのノンフィクションを超えて、ライフワークの域に達している、と紹介者の方は言います。学派に偏らず、歴史的な経緯を著述する点、また、心理学・精神医学の偉人である、河合隼雄、中井久夫、両先生の言葉の記録が貴重な一冊。


  後半のフリータイムでは、「文房具ルーム」が開かれ、各自、持ち寄った文房具を紹介し合いました。くるくる巻きのペンケース、七つ道具のようなマルチツール、ブックホルダー、ユニークな付箋やペーパーナイフが机のうえに並びます。話題は、ガウディから発展してスペイン語、臨床心理学、手作りの絵本、ルオーの絵、漫画『神様はじめました』などに及び、話が盛り上がるうちに終了時間を迎えました。


 その後は、数人が残ってもうワンドリンクを注文、夜のエスキスの静かな雰囲気を味わいながら、ゆったりとお話ができました。みなさま、今回もありがとうございました。

【書誌情報】
『ガウディ:ポップアップで味わう不思議な世界(しかけえほん)』、コートネイ・ワトソン・マッカーシー、木村高子訳、大日本絵画、2012
『暇と退屈の倫理学』、國分功一郎、朝日出版社、2011
『セラピスト』、最相葉月、新潮社、2014