2014年 6月8日(日)14時〜17時
今回は、13名でソクラテスのカフェ奧のスペースにて、「本のカフェ」を開催しました。くすみ書房の久住社長も駆けつけてくださり、ご挨拶をいただきました。ささっと自己紹介ののち、本の紹介タイムへ。
一冊目は、辻仁成、江國香織『冷静と情熱のあいだ』(BluとRosso)。着物姿で、紹介者さんが登場。古風なカフェの雰囲気とも合っています。10年前は作家同士のコラボもまだ新しかったのではないか。辻さんと江國さんが、男女ふたりの主人公それぞれの視点から、同じ世界を描く二冊の本です。紹介者は、20代半ばで読み返したとき、男性主人公の「女々しさ」に腹が立ったそう。「女々しいという言葉は男性のためにある」のかも。
二冊目は、カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』。ブッカー賞を取った作家でもあります。幼い頃、渡英して、以後はイギリス。本作は、キャシーという主人公が31歳の現在から、過去を回想するかたちで話が進みます。かんしゃくもちでいじめられもするトミー、キャシーは彼を最初から最後まで気にかけています。「隠された設定」が暗雲のようにたれこめ、衝撃を与えるなかで、人間関係の複雑さと心の機微が淡々と、緻密に描かれます。
三冊目は、折口信夫『死者の書』。民俗学者、国文学者、歌人であり、「折口学」と呼ばれるほど独特な研究を遺した著者の小説。あらすじは、中将姫伝説を下敷きに、信心深い藤原郎女(いらつめ)が神隠しに遭ったのち、寺に籠もる。大津皇子の霊が夜な夜な来てやりとりをして、最後に曼荼羅を編み、天に召される。内臓をわしづかみにされるようなプリミティブな読書体験。歌やオノマトペがいびつさをもちながら、体に訴える、と。
後半は、フリータイム。そこで、「ブックルーム」が開かれ、本に関する小物が持ち寄られました。
19世紀前半の博物誌の本からページ単位で切り取られた紙。 |
特装本 |
一方では、たいへんに面白いコレクションが開陳され、他方では、高齢の方が満州引き上げや戦後の逸話を語り、若いひとたちは熱心に耳を傾ける。そんなユニークな時間でした。
スタッフのお二方、駆けつけたくださった久住社長、紹介者のみなさま、お越しくださったおひとりおひとり、見守ってくださったみなさまに、厚い感謝をお伝えします。
17時のあとは、数人で近くのカフェに二次会へ。 |
最後に、当日、受付ほかお手伝いをして雰囲気作りにも一役買ってくださった、ゆーうち様、ここで使っている写真の一部(バシッと決まっているもの)を撮っていただいた Noriko Yoshimoto 様、ありがとうございました。
木村洋平(主催、文責)