2015年4月30日木曜日

【本と珈琲豆】『ヤノマミ』

〜本と珈琲豆は、楽しい書評コーナーです〜


ヤノマミはアマゾンの原住民だ。彼らの言葉で「人間」を意味する「ヤノマミ」と呼ばれている。彼らの集落に150日間住んだ記録がこの本。



死に関するところを引用する。

 ヤノマミのしきたりでは、死者に縁のものは死者とともに燃やさねばならない。そして、死者にまつわる全てを燃やしたのち、死者に関する全てを忘れる。名前も、顔も、そんな人間がいたことも忘れる。彼らは死者の名前をけっして口にしない。
 
 「燃やすのは縁のものだけではない。彼が祭りでワトリキ[部族の名前]に来た時に蔓を切った場所や、野営をするために木を切り倒した場所も燃やしてきた。私たちが死者の名前を口にしないのは、思い出すと泣いてしまうからだ。その人がいなくなった淋しさに胸が壊れてしまうからだ。ヤノマミは言葉にはせず、心の奥底で想い、悲しみに暮れ、涙を流す。遠い昔、私たちを作った<オマム(ヤノマミの創造主)>はヤノマミに泣くことを教えた。死者の名前を忘れても、ヤノマミは泣くことを忘れない」
 死者のための使者としてやって来た友人は、そう言った。(p.119-120)
 
不思議な慣習だと思った。

【書誌情報】
『ヤノマミ』、国分拓、新潮社、2013