2015年5月24日日曜日

ぱっと開いての品定め(本)


本屋さんで本を選ぶときは、「ぱっと開いての品定め」ができる。ほんとうに、真ん中のあたりをぱっと開いてみる。そこに、一冊の雰囲気や質が浮かび上がる。


以前、古楽を演奏する友人が「譜面(ふづら)」を読む、という話を聞かせてくれた。頭のなかで音楽を再生しなくても、楽譜の表面から音の世界が広がる。

たとえば、音符が詰まっているかどうか、リズムが複雑か、上昇・下降音階をくり返しているか、など。愛でるように楽譜を眺めているだけで、わかってくる、と。

同じようなことを、本に対してもできる。まったく知らない作者の本でも、画像として飛び込んでくる「見開き」をみることで、そこに本の全体が透ける。ちょっとした文体のこと、なにか言葉の香り、言葉の絵、そういったことがらが味わえる。

さらに、気になる一文があれば、実際に前後を「読んで」みてもいい。気に掛かるところがなかったら、また閉じて、もう一回てきとうなところで開く。本は、不思議なことだが、どこかひとつの見開きに全体の空気が閉じ込められている。

こうしたぱっと開いての品定め、ができるのは本屋さんならでは、と思う。電子書籍ではまだできない。