札幌の生活にもだいぶ馴染んだ。毎年、眺める芝桜の群れ。
芝桜四つの島に四つの色
赤、白、ピンク、織り交ぜた柄。
蒲公英はぜんぶ綿毛になった
一面に咲き誇っていたたんぽぽがことごとく白く淡い綿毛に。今年の暖冬から春先は、温かかったためもあるが、北海道の春は駆け抜けるようにやってきてあっという間に初夏が圧倒する。
蝦夷梅雨の地に跳ねて飛ぶ雀かな
蝦夷梅雨、ほんとうに北海道に梅雨があるのか、気象の詳しいことはわからないが、去年も雨が続いたこの時期。本州のように湿気て蒸し暑くはない。ふわあっと霧がかるように雨が降り、そう勢いもなく、やがて晴れて乾く。
リラの匂いがいまだにわからない
リラの香り知ってまた忘れ去る
おぼろげな香り。自然のなかではそれほど匂わない。よくよく近づいてやっとわかった。漂ってくればはっとするほどには覚えられていない。
薄雲と変わらぬ白き夏の月
昼間の月。
木々に囲まれて広し夏の空
破調の句が多い。くだけてきている、崩れてもきている、俳句。ある朝、朝の光のなかをゆく。
生え変わる松葉の先の雨雫
札幌に三年。旅心地に始めた「札幌便り」も、もう定住地に近づいた。この地での俳句の新味はここ数ヶ月、失せつつある。そろそろ、一区切りつけよう。また、函館か音威子府か富良野へでも移住したら、書き続けたい。いまは、これ以上、詠めそうにない。
春楡の名の珈琲や風薫る
夏帽子外して吟遊詩人去る
*長い間、ご愛読くださったみなさま、ありがとうございました。*