2016年2月27日土曜日

【本の紹介】スーザン・ソンタグ『良心の領界』


ソンタグの講演集。序には引用したい言葉が多くあった。

作家、批評家として9.11以後も活発に発言したスーザン・ソンタグ(1933-2004)。その立場はラディカルな左派だが、立ち位置は慎重で、現場主義であり、戦争にも絶対反対ではなかった。生まれ育ち、住んだアメリカに対しては、厳しい批判をぶつける。正直、これら本編の講演はさほど面白みがなかった。

心に響くのは序で、ここには壇上の知識人でない、スーザン・ソンタグの半ば自分へ向けての語りが聞かれる。ぱらぱらと引用する。

「若い読者へのアドバイス……(これは、ずっと自分自身に言いきかせているアドバイスでもある)」

というタイトル。

「社会においても個々人の生活においてももっとも強力で深層にひそむ検閲は、自己[←傍点]検閲です。」

「本をたくさん読んでください。本には何か大きなもの、歓喜を呼び起こすもの、あるいは自分を深めてくれるものが詰まっています。その期待を持続すること。」

「自分自身について、あるいは自分が欲すること、必要とすること、失望していることについて考えるのは、なるべくしないこと。自分についてはまったく、または、少なくとももてる時間のうち半分は、考えないこと。」

「動き回ってください。旅をすること。しばらくのあいだ、よその国に住むこと。けっして旅することをやめないこと。もしはるか遠くまで行くことができないなら、その場合は、自分自身を脱却できる場所により深く入り込んでいくこと。……[中略]……たとえば、庭は、過去はもはや重荷ではないという感情を呼び覚ましてくれます。」

わずか4ページの序に密な言葉が詰められています。1933年生まれ、およそ70歳のソンタグの熱意。

【書籍情報】
『良心の領界』、スーザン・ソンタグ、木幡和枝訳、NTT出版、2004