2016年5月10日火曜日

【本の紹介】『神の発明 カイエ・ソバージュ4』中沢新一

古来、ひとはアニミズム的なスピリットの世界に住んでいた、と著者は言う。それは世界中に見られる多神教的な文化だそう。そこから、ふたつの種類の神が生まれてくる。


ひとつは、「高神(たかがみ)」と呼ばれるもので、「垂直的」な図式で捉えられる。それは天などの高いところにおり、同じ場所(祀る所や地域)にいつもいて、無形象でせいぜい「まばゆい光」といった描写しかされない。

もうひとつは、来訪神と呼べるもので、折口信夫の「まれびと」のように外からやってくるもの。これは「水平的」な図式で捉えられ、異世界や海の向こうから、一年のうちの数日だけ、やってくる。形象をもっていることが多く、奇抜な仮面をかぶったお祭り騒ぎなどのうちに表象される。

こうして、ふたつの神の類型が対比される。しかし、ここから唯一神が生まれた文化があり、そこでは、「高神」がさらに高められることで他の神々を周縁化するようになり、来訪神も役割を追われていく、とのこと。

ちなみに、別の本(『インディオの気まぐれな魂』)には、ブラジルのインディオ(先住民)は水の上をわたって遠くから来た白人を神のようなものとして、はじめもてなしたという。来訪神の観念が生きていたのだろう。

以上、ざっとまとめたが、面白い話だと思った。

【書誌情報】
『神の発明 カイエ・ソバージュ4』、中沢新一、講談社、2003