2016年9月6日火曜日

ごく個人的な話ーー書き手として接する、本、絵画、音楽


本と絵画と音楽は、いずれも好きだが、どこか作用の仕方がちがう。

書き手として、本は不可欠のものだ。情報源としても、知の愉しみとしても、古典に学ぶことも、読む喜びも、自分の立ち位置を確かめるためにも、あらゆる点で必要な栄養源みたいなもの。

それに対して、絵画と音楽は、言ってみれば、趣味として鑑賞する。このふたつの作用の仕方が、やや対照的で面白い。

音楽は、毎日の生活のなかにある。古楽とクラシック音楽を中心に、音楽を聴いていると気持ちが活き活きしてくる。いろいろと考えることもあるが、単純に好きなものを聴く。

シンプルなつきあい方だ。ときに、音楽から着想を得ることもある。けれど、着想なんてなくても、あえて言葉にしない印象、音そのものが十分な満足を与えてくれる。

対して、絵画は、特別な時間(ギャラリーや美術館を訪ねる)に観るもので、また、批評的に眺める。どこがよいか、足りないと感じるか、をなるべく頭のなかで言葉にする。

絵画とは「対峙する」ところがある。好きか嫌いかはいったん脇に置く。絵画表現は、なんというか「目に見える」点で、言葉表現に、僕にとっては似ている。言葉もまた、書き手と主題を浮かび上がらせ、可視化する。

画家と絵画の関係、また画家の生き方にも関心がある。それらは、書き手と作品の関係、書き手の生き方とパラレル(平行)である、という気がしばしばする。

言ってみれば、平行関係がある別のジャンルで、どのようにひとが生き、描くのか、ということに強い関心があり、それと「対決」することによって、自分の書き手としてのスタンスを確かめなければならない、そんな気分でふだんから絵に向かう。

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こうしてみると、日常的には音楽の方に親しんでいるが、本気で向かい合う相手は、絵画であるような気もする。

音楽と絵画は、かなりちがった仕方で僕と関係をもち、けれども、いずれも僕を元気づけて、必要な滋養を与えてくれる。