2016年10月28日金曜日

雨と木曜日(102)

2016.10.27.



木曜日更新のエッセイ。
今回は、劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス〜お湯割りのスペシャルティコーヒー〜ニーチェ、ドイツ語翻訳の話。



「劇場版ムーミン 南の海で楽しいバカンス」を観た。2014年にトーベ・ヤンソン生誕100周年を記念してフィンランドで作られた。トーベの姪もプロデューサーとして協力。全編、手描きで制作したそう。ムーミン谷のみんなは相変わらずマイペースだが、とりたてて衝突もせず、仲は良いという独特の雰囲気は活きている。ただ、セレブのいる観光地はどことなくアメリカナイズされた世界観を含み、原作ファンは戸惑うかもしれない。

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コーヒーのお湯割り?という不思議な話。とあるスペシャルティコーヒーのお店では、「珈琲豆のよい成分のみを抽出する」ために、一杯分の豆を使いつつ、カップの半分だけ濃厚に淹れる。そこへ、もう半分は適温のお湯を注ぎ、完成。お湯割りスタイルだ。こういう淹れ方は初めて聞いた。実際、透明な、濁りや雑味のない味がした。家では、ときどき、濃く淹れすぎたときに軽くお湯を差していたけれど、あれもよかったのかな?

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ニーチェ、ドイツ語翻訳の話。「神は死んだ」のフレーズで有名な『悦ばしき知識』を読んでいて、面白い箇所を見つけた。「同喜共歓」と訳された部分で、これは「同情」と対比されている。日本語では、この対比がわかりづらいのだが、ドイツ語で読むとちがう。「同情」の原語は "Mitleiden"(ミットライデン) で文字通りには「共苦」。「同喜共歓」の原語は、"Mitfreude"(ミットフロイデ)で「共喜」。これを訳出するのは大変だ!

『悦ばしき知識』、ニーチェ、信太正三訳、ちくま学芸文庫、1993