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2016年10月29日土曜日
【映画】「リトル・プリンス 星の王子さまと私」
映画「リトル・プリンス 星の王子さまと私」は、原作『星の王子さま』を知っていても、あるいはよく知らなくても楽しめるすぐれた作品。
前半の見所は、なんといってもクレイ・アニメーション(紙粘土と紙を活かしてコマ撮り)の部分。
映画は、外枠の物語(少女と老人の掛け合い)と、原作『星の王子さま』のハイライト・シーンが描かれる内側の物語に分かれているが、外枠の物語をCGで(CGらしいカメラワークも面白い)作り、原作の再現をクレイ・アニメーションで作っている。
その対比がよいだけでなく、とりわけ原作の方が味がある。人形の骨格を作り、紙粘土と紙、とりわけ紙の質感を活かしたアニメーションは、一日に1,2秒しか撮影できなかったという。(コマ撮りなので、人形をちょこっと動かすたびにカメラで撮って、をくり返す)。サハラ砂漠も、砂ではなく、紙で表現しているため、背景までそっくりひとつの世界に収まる。
さて、驚くのは、2時間近い上映の半分あたりで、原作のストーリー紹介が終わってしまうこと。王子は蛇に足首をかまれて、倒れる。すると、残りの後半ではなにが起こるのだろう?とファンは期待して待つ。ここからが、新たに創作されたファンタジーの傑作。
場面は次々と切り替わり、ユニークな登場人物が現れ、主人公の女の子は星の王子さまと再会を果たすが……。ファンタジーの魅力はやはり「なんでもあり」ということ。だけれども、それがご都合主義になってはつまらない。あくまで、通す線、見えない一本の軸を踏み外してはいけない。また、現実世界への回帰を自然におこなわないと、物語を回収できなくなる。
これらの点を踏まえながら、めくるめく展開で盛り立てた後半は、すっと糸を引くように小さな力で、こぢんまりしたエンディングに結びつけられて、安堵のエンドロールとなる。
なお、末筆になってしまうが、キャラクター造形も発想がよく、外枠のふたり(老人と少女)はドライで行動的に描かれている。それが原作の感傷やノスタルジーとかぶらず、対照されている。そして、「子供のなかの子供」という役割が、星の王子さまから、主人公の女の子へバトンを渡すようにつながれていく構成もうまいよね。
全編、素晴らしい作品でした!