2016年12月1日木曜日

雨と木曜日(107)

2016.12.1.


木曜日更新のエッセイ。
今回は、手帳の買い替え〜本場のフレンチトースト〜自家焙煎の「深煎り」店主〜『チャリング・クロス街84番地』。4本立て。


***


来年の手帳を買った。新旧並べてみてもほとんど変わらないが、"K" の書体がちがう。このシリーズが気に入っている。以前、スヌーピーの手帳を遊び半分で使ってみたら、打ち合わせの時に(日時を決めたりするのだ!)テーブルの上に出すのに差し障りがあった。向こうは、ビジネス用のぶ厚いノート付き手帳だった。これはまずいよね、と思い、それからはシンプルなものに替えた。マンスリーのみで鞄にいつも入れておけるものがいい。

***

「フレンチトースト」を本場のフランスでは、「パンペルデュ」と呼ぶことを知った。さぞかしシャレた意味があるのかと思ったら、「ダメになったパン」という意味だそうだ(!)。というのも、フレンチトーストの考え方はそもそも、日数が経ってカサカサになってきたパンを卵液に浸しておいしいパンに生まれ変わらせる、という趣旨らしい。けっして、ホテルの朝食でビュッフェに添えられる非日常のパン、というわけではないのだね。

***

自家焙煎の珈琲屋さんで、「酸味のおいしい豆はありますか」と聞いたら、そこは昔ながらのお店だったのだが、おじいちゃんマスターがカウンターの向こうから、「ないよ。あえて言えばコスタリカだが。うちは直火で焼いているから、酸味は飛ぶんだ。酸味がよいならデパートに行きな」と言う。そして、お客さんに「酸味が好きな連中は草食だ」としゃべり出した。これは筋金入りだと思って、キリマンジャロを買ったが、深煎りでコクがしっかり。

***

『チャリング・クロス街84番地』という心をくすぐるタイトルの本。副題は「書物を愛する人のための本」。はじめの日付は1949年。書簡体のノンフィクションで、著者はニューヨークに住む貧乏作家。イギリスのチャリング・クロス街84番地にある、絶版書を専門に扱う古書店を広告で見つけて、20年に渡るやりとりが始まった。著者は、ときに皮肉の利いたジョークを交えながら英国の古典を集める。古書店のこまやかな気配り。心温まる交流。


【書籍情報】
『チャリング・クロス街84番地』、ヘレーン・ハンフ、江藤淳訳、中公文庫、1984