2017年2月2日木曜日

雨と木曜日(115)

2017.2.2.


木曜日更新のエッセイ。
今回は、ドイツ語の混じるメール〜びぃどろの紅茶〜アチェベ『崩れゆく絆』。


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ドイツ関係の仕事でメールをいただいた。その一文に「このままだとダメというわけでは全くなく、単にVerbesserungsvorschlagです。」とあって可笑しかった。ドイツ語は単語をくっつけて熟語のようなものを作ることができる。この場合、フェアベッセルングス・フォアシュラーク(改善・提案)となる。なにも気取ったり、「業界用語」を楽しんでいるのではなくて、この方は自然とドイツ語が先に出てくるのだ。面白くびっくり。

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びぃどろの紅茶をいただいた。紅茶屋さんチェーン「ルピシア」の商品で、長崎エディションのようだ。「びぃどろ」の名前は、ガラスを意味するポルトガル語から来ている。ガラス工芸は南蛮渡来の技術で、長崎の伝統となる。すでに1670年には「びいどろ吹き」がいたことが文書からわかるという。紅茶には、茶葉に混じってカラフルな金平糖が入っていて可愛らしく、お湯を注ぐと溶けてしまうが、ほのかな甘みが添えられる。

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アチェベ『崩れゆく絆』はぜひともおすすめしたいアフリカ文学になった。一読してぐいと引き込まれる。2/3ほどが19世紀後半の、まだ白人が侵入していないナイジェリア、イボ族の文化を記している。ここは「民族誌」(エスノグラフィー)として読まれるほど、文化を丁寧に紹介するが、人物の描写やストーリーの展開もきちんと織り込まれる。そして、イギリスとキリスト教が土地に入って激変を起こす後半も必然性と勢いがある。

『崩れゆく絆』、アチェベ、 粟飯原文子訳、光文社、2013