2017年4月4日火曜日

ヴァージニア・ウルフ、女性が小説を書くこと


V.ウルフ(1882ー1941)は、<女性と小説(フィクション)>というテーマでの講演を依頼される。その原稿に加筆修正して本にしたのが『自分ひとりの部屋』。


女性が小説家になろうと思ったら、「年収(500ポンド)と自分ひとりになれる部屋が必要だ」という現実的なアドバイスが軸となる本書。過去のイギリス女性小説家がどんな立場に置かれたか。

イギリスの女性は長い間、私有財産を持つこともできず、自分の部屋もなく、居間で人目を気にしながら、自分の時間もろくろく持てずに小説を書いてきた。女性が小説を書くのは恥だったという。また、旅行やレストランに行く自由もなかった。経験を積む場所が男性よりずっと少なかった。

そういう過酷な環境のなかで、(シェイクスピアのように)「すべての障害物を焼き尽くしている」と言えるのはジェイン・オースティンだろう。1800年前後に憎しみも怨恨も恐怖も、たとえ感じていたとしても作品内に持ちこまなかった。と、ウルフは書きつつも、『ジェイン・エア』の作者はオースティンより才能があったろう、とも書く。

このあたり、ひとつの結論に飛びつかないたゆたう書きぶりは面白いが、ジェイン・オースティン好きの僕としては上の賞賛には納得した。

なお、トルストイは男性的で、プルーストは過剰に女性的(いい意味で)、というウルフ独自の評価は面白かった。前者は心理に理屈っぽく、後者はたゆたう意識や連想の流れがあるということだろうか。

1866年以降、イングランドには女性のためのカレッジが少なくとも2つ、開設された。1880年以降、既婚女性は財産所有権を認められた。1919年には女性は投票権を与えられた。(1928年)現在では、2000人ほどの女性が、年収500ポンドをなんらかの方法で得ている。

と、歴史はやっと改善の兆しをみせた。ちなみに、聞いた話ではいまの日本では、裾野まで含めれば女性小説家の方が男性よりもずっと多いそうだ。

ヴァージニア・ウルフ、『自分ひとりの部屋』、平凡社、2015