2017年6月15日木曜日

雨と木曜日(132)

2017.6.15.

木曜日更新のエッセイ。
今回もフリースタイルで。「辞書でフラれた話」*「子供の貧困、と」*『森は生きている』。



数年前に何度かデートをした女の子がいる。ふたりともカフェ巡りが好きで、街を歩いた。そのうち、飽きられた感があり、ふとしたはずみに僕の鞄がいつも大きいよね、という話になった。ボディバッグのようなスタイリッシュなものは使っていなかった。「木村さんって、鞄の底にふだんから紙の辞書を入れていそうだよね」と言い、彼女がからからと笑った。それでスタバを出て以来、音信不通になった。

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「子供の貧困」関連のニュースで東京新聞を見ていたら、ユニセフの調査で先進41カ国中…(いろいろな項目)…とある。「貧困の撲滅 23位」。これは驚かない。その下に「働きがいのある人間らしい仕事 1位」とあって、びっくりした。

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ロシアの詩人マルシャークの『森は生きている』を再読。子供向けの戯曲だが、大人でも読み応えがある。大晦日の夜に、ままむすめは森で「十二の月」と出会い「四月」から指輪をもらう。家ではいじめられているが……。児童文学×戯曲というのは、めずらしい。それも西洋の伝統を継いだ本格的な戯曲の趣がある。そして、固有名詞がひとつも出てこないのも面白い。全体を通したユーモアとドライなヒューマニズムがやさしい。

『森は生きている』、サムイル・マルシャーク、湯浅芳子訳、岩波少年文庫、1953