2017年6月9日金曜日

雨と木曜日(131)

2017.6.8.

木曜日更新のエッセイ(一日遅れ)。
今回は、200字×3段ではなく、自由な形式で。

サウジアラビアの友人から聞いた文化のちがいと、『かるいお姫さま』(岩波少年文庫)。



サウジアラビア出身の友人と夜ご飯を食べた。

彼は日本が好きだと思うが、「日本はおかしいよ」と笑っていた(ちなみに、日本語は流暢)。みんなが同じであろうとして個性を押さえ込むのもなぜだかわからない、もっと個性を前面に出したらいい、と言っていた。サウジアラビアは欧米と同じく個人主義らしいので、日本の均質性のなかではやりづらいそうだ。

なにかあると謝る、それも家族や組織のトップなど、直接悪いことをしていないひとも謝るのは意味がわからない、という。

英語を使わないのも日本人の特徴だと言っていた。たとえば、英語のサイトでアラビア諸国やタイ、韓国といった世界中のひとが集まってコメントしていても、日本人だけいないという。

そのあと、サウジアラビアの首都、リヤドの話が出たので、人口の一極集中は起こらないか、と尋ねたら、「ほぼない」と。仕事を求めて移るケースはあるが、ほとんどのひとは地元に愛着がある。姓を聞いただけで出身地がわかるほど、みな同じ地域に留まるそうだ。

そして、方言を誇りにしている。日本のように首都圏では標準語をしゃべる、ということがない。地域による言語差は大きいらしい。たとえば、西部はオスマン・トルコの支配が長く、年長者はトルコ語の語彙が日常会話に混ざる、など。

もうひとつ、面白いのはイスラーム圏の特徴ではないかと思うのだが、血縁・親族の関係を大切にするという。いとこのいとことも会ったことがある、と言う。

ずいぶん文化(主に地域と人間関係について)がちがうな、と思った。


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岩波少年文庫の『かるいお姫さま』を今週のおすすめにしたい。作者のジョージ・マクドナルド(1824-1905)はルイス・キャロルと同時代人で、『不思議の国のアリス』と併せてイギリス・ファンタジーの先駆けと言われる。表題作の「かるいお姫さま」は、魔女に重力を奪われて体重がなくなってしまうお姫さまの物語。グリム童話や民話の雰囲気に近く、創作童話にありがちなセンチメンタルを意識的に排除している。そのために結末が情緒的には受け容れにくくなっているが…。同時収録の「昼の少年と夜の少女」の方が、完成度は高いように思えた。面白いよ!