2017年10月4日水曜日

エリック・ホッファーの言葉たち


エリック・ホッファー(1902-1983)はロサンゼルスで港湾労働者として働きながら、社会哲学について著述し、カリフォルニア大学バークレー校で政治学を講じたという異例の経歴の持ち主。

ホッファーは、日々、アフォリズムと呼ばれる短い断章を書きつけ、それをもとに長い著作を構想したらしい。『魂の錬金術:エリック・ホッファー全アフォリズム集』は、彼のアイデアの元素たるアフォリズムを集めたもの。以下に紹介してみよう。


「社会秩序というものは、才能と若さに将来の見通しを与えているかぎり安定する。若さはそれ自体が、ひとつの才能ーーこわれやすい才能なのである。」p.23

「のんきな人間は、自分の将来や義務を過度に深刻に考える人よりも、永遠性、すなわち絶え間ない生と死の流れを認識しうるであろう。実に軽薄な人とは、ものごとを深刻に考えすぎる人である。」p.52-53

(長い断章の一部を引用)「子どもじみた無頓着さをもつ人間だけが、必要以上のものを追求して、工作し、遊び、努力した。しかし、工作と遊戯、そして生存には必要不可欠でないものに対する思い入れこそが、すぐれた装備と明確な目的をもつ動物に対して、人間が勝利することを可能にした発明の源泉となったのである。」p.132-133

「革命家も創造的な人間も、永遠の青年である。革命家が成熟しないのは、単に成長できないからである。一方、創造的な人間が成熟しないのは、つねに成長をつづけているからである。」p.171

「真に才能のある者は、どんなに技量が欠けていても、何とかするものである。」p.172

ホッファーのアフォリズムは多様なテーマを扱うが、とくに全体主義の危険、大衆が群れて同じ方向に向かうことの危険性を指摘したものは多い。このあたりが『大衆運動』といった彼の著作に結びついているのだろう。ただし、今回は、ぼくが興味深いと思ったものを適当にセレクトした。

『魂の錬金術:エリック・ホッファー全アフォリズム集』、中本義彦訳、作品社、2003