2018年6月6日水曜日

【新刊】『穏やかな看取りのために』

6月15日『穏やかな看取りのために:15の事例で学べる介護のポイント』が発売になりました。いま介護しているひとも、これからの方もきっと得るところのある本です。



著者は、福祉行政にたずさわったあとケアマネとして長年、施設で経験を積み、退職後には居宅介護支援事業を始めた方。本書にも、現場の声が息づいています。

なにより惹かれるのは実話に基づく15のエピソードで、「死が近づくと、こんなことも起こるのか……」とびっくりしたり、納得したり。「人間」というものの理解に近づけそうです。

エピソードのそれぞれには、「ケアマネの視点」として専門家の立場からのコメントや理論の紹介もあり、認知症や介護の現場の実情、そこでの具体的なアドバイスも豊富です。


参考までに目次(の一部)をお披露目します。

1.白寿の祝い──老衰と看取り
2.初孫を抱きながら──心配性の方への配慮
3.透ちゃんは良かったね──医療の方針の自己決定
4.団らんのひと時①──長く生きる悩みへの受け答え
5.団らんのひと時②──こだわりの理解、反りが合わない時
6.陽が昇り陽は沈む──死に対するスタンス
7.小学校の卒業生名簿──回想のもつ力
8.社長報告──外出サービスの実施
9.キュウリもみ──ラポール(信頼関係)の構築とコミュニケーションの技法
10.ポンスケだから──頻繁な物忘れとナラティブ・アプローチ
11.シャント交換──介護現場における予定変更の困難
12.心臓が止まった──恐怖心の理解とニーズ概念
13.目、見えないから──財産管理が難しくなった時
14.むすんでひらいて──準拠集団に思いを馳せる
15.母ちゃんが枕元に立った──非合理な事柄と向き合う

ぼくがとくに印象に残ったのは、愚行権を行使して逝った「透ちゃん」の物語。それから、死を恐れぬ「最強の人」の話。すぐにでも使えそうな「回想法」。そして、掌編小説のような幻想が現実に起こる最終章のエピソード、です。

全編、優しい目線と落ち着いた物腰が伝わる文章で、安心して読めます。じわじわと染みるような読後感。
介護の時代におすすめの一冊です。