2019年7月10日水曜日

【新作CD】「歌の蒐集家たち」永田斉子 Lute


永田斉子さん(リュート、月琴奏者)の新作CD「歌の蒐集家たち "Song Collectors"」を(こちらで)購入。



ヨーロッパの民謡を集め、歴史的な変遷をたどり、その系譜にあるバリエーションを研究した。それらは詩人や音楽家や出版者、編集者たちが、その時々で記録に残し、広めたもの。


アルバム全体から歌心が伝わってくるが、それは「アーティスト☆永田斉子の世界」ではなく、誰でもない、民謡を愛した無名の人々の、過去からすくいとられたその声であるように思える。

ここにあるリュートの響きは、凝縮され閉じた音世界ではなく、周囲の風景に広がり、いつでもBGMと化してしまうようだ。

と言って、演奏は丹念そのもので、一音一音の倍音と減衰にまで、力強く、神経を働かせている。けっして超絶技巧でも神経質でもない、穏やかな音色。ご本人の言葉を借りると「心安らかな夜」をイメージされたそう。


このCD、おひとりで全制作過程を担われたと聞いているが、録音はとてもよい。クリアで奥深く音を拾っている。そして、装幀(とは言わない?)もすぐれたもの。


CD盤上も、ケースから外した時のバックも。そうそう、レーベルも個人の"Merry Melacholy" だが、まさに「陽気なメランコリー」の音楽。

ちなみに、ライナーノーツは詩のようだ。解説はCD本体にはついていない(永田さんのブログに掲載予定)。

* 解説めいたひと言:3曲目の「サリー・ガーデン」は、民謡の冒頭、数小節をただひたすらくり返していく。そのたびにアレンジ(装飾)が変わるので、まるで「変奏曲」のようだが、ぼくの推測では、すべて別の写本・印刷譜からの引用では。(古楽奏者として装飾をつけたのではなく)。

そのコラージュで単調にならず、音楽として成り立ってしまう民謡の豊かさを思う。