2020年2月20日木曜日

ソール・ライターの写真


渋谷のBunkamura ミュージアムで開催中のソール・ライター展。

観に行ったのは1月だが、ほんとうによかった。

「写真というイメージは、それが胸を突く何かをもっているとき、隅々にまで注意力を凝らしているのに、そのまま夢の形成力が解放される場に変容する」

ロラン・バルトの写真論を要約した一行を読む。
(『目覚めたまま見る夢:20世紀フランス文学序説』塚本昌則,岩波書店,2019 p.190)

ソール・ライターにぴったりの表現だ。

* * *

ニューヨークの写真家は遊歩者でもあった。
うつろいさすらいつづける、切実さをもつ魂。

コーネル、シミック、ライター……世紀半ばのニューヨークで神にまみえた者たち。小さき神。

どの一枚も完璧で、すべてが渾然一体となっていて、どれがどれで何を写しているかは関係がなかった。

──集中力によって対象を掴む、が、その途端に手放す。そこを撮っている。

掴むだけだと、凝縮させ、強い力で押さえつけ、固定化してしまう。

うつろう時間の感覚、浮遊感が写真から漂う。