2020年7月26日日曜日

漂泊の歌人、西行の和歌より

西行は、平安末期〜鎌倉初期に生きた僧侶である。「修行」として日本各地を歩きながら和歌を詠んだ。

江戸時代に描かれた西行

ゆくへなく月に心のすみすみて果はいかにかならんとすらん

月を愛した西行はその澄んだ光にわが心の果てを思う。

ともすれば月すむ空にあくがるる心の果てを知るよしもがな

あくがれし心を道のしるべにて雲にともなふ身とぞなりぬる

そして、雲のように漂泊する。

心をば深き紅葉の色に染めて別れて行くや散るになるらん

切なる別れを詠んだ歌だが、西行の和歌にはどれも静かに微笑んでいるような風情がある。

おおらかさ。人間の器の大きさ。それが風雅を強くする。また、仏教の無常を味わいながらも、日本古来の情緒を寄せてもののあはれを描くのだろう。

なにより西行には「遊」がある。それは旅を意味するとともに、あのおおらかな微笑みに帰ってゆく遊び心である。別れを歌い、無常を思い、つらい恋を言葉にしても、そこには遊びがある。

それこそ『山家集』に秘められた遊戯ではないだろうか?