2020年10月27日火曜日

7年前の夏の詩

7年前の夏に書いた詩をみつけた。

ところどころ「雨ニモマケズ」を思わせる。手を加えずに公開してみようと思った。

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吟遊詩人の詩(うた)


ひとの喜びを喜び ひとの悲しみを悲しみ

ゆくひとを励まし 迷うひとと憩う

静けさのうちにやすらい

楽の音のように語らう


ときには

言い知れぬ苦しみを抱えて

打ち明けえぬ悲哀に向き合いながら

いつでも 遠いまなざしでなにもかもを眺めている


一日ごとに移りゆく季節と挨拶を交わし

揺れる詩情と旅をする


隣で困っているひとを助け 遠くでベッドに横たわっているひとへ手紙を書く

どこにいても朋友に感謝し ときどき絵葉書を投函する

ひとを愛し やさしさをもて


春の夕焼けのように慈しみ

夏の樹々のようにまっすぐに立ち

梅雨のあじさいのようにほほえみ

秋の月のように清らかで明るく

冬の星々のように冴え冴えとしている

そんな風であれ


珈琲を愛飲し、くつろいでいる


舞い散る花の雲のなかで桜色の妙なるを貴び

夏の夜の帳がえも言われぬ紺碧を深めるさまを呼吸し

秋の終わりに舞い落ちるアカナラの葉のひとひらを見届けて

雪のなかで結ばれた小さい真っ赤なななかまどの実を愛おしむ


いかなるひとにも分け隔てなく かけられた言葉を楽しみ

見知らぬひとを思いやり 見知ったひとと打ち解けることを ためらわない


人一倍正義を思えども 「不正」と叫んで他人に憤ることはもっとも少なく

平静な心を忘れずに 穏やかな口調で詩のように話す


ものを少なくしか持たず 所有するよりも贈ることをうれしいと思い

居心地の良い場所にいても ひとつところにとどまらない


朝 起きる場所と 夜 寝る場所をたがえても 変わることなく

落ち着いて あてもない道行きで どこかには辿り着くと考えている


ひとの喜びを喜び ひとの悲しみを悲しみ

ゆくひとを励まし 迷うひとと憩う

静けさのうちにやすらい

楽の音のように語らう


ときには

言い知れぬ苦しみを抱えて

打ち明けえぬ悲哀に向き合いながら

いつでも 遠いまなざしでなにもかもを眺めている


一日ごとに移りゆく季節と挨拶を交わし

揺れる詩情と旅をする