ゆっくり歩く。
焦らないことだ。
ひとをせかしても仕方がない。自分も。
それとも、居ても立っても居られないのか。
***
ミヒャエル・エンデは、アルプスかどこかを旅した時に書き留めた。
「途中まで、旅はまことに順調でした。予定より数日早く、どこどこに到着し、……しかし、そこで案内人たちが座り込んでしまったのです。
彼らはタバコを吹かしながら、なだめてもすかしても前へ進もうとしません。私はたずねました。『ねえ、君たち、先を急ごうじゃないか。なにをしている?』
『待っているんですよ。おれたちのゼーレ(Seele, 魂)が追いついて来るのを……』」
それを聞いてはっとしたエンデは、じっと待つことにした。