2021年3月10日水曜日

ポイボス・ポイエーシス - 明るい創造 その1

 第一歌

新しい始まりについて語らなければならない。
はじまりの一歩を記さなければならない。
遊戯の光をもたらすため。

 薄明の海に船出しなければならない。
終わりの島を抜け出して
太陽の昇る大洋に出る

なんの地図もない、海図のない
羅針盤を打ち立てなければならない
みずからの手で

拙い言葉で歩き始める
幼児のようにはいはいして
ことばのないところに
ことばを産み出す仕事だから


アポロンの像を見よ

ここにポイボス・ポイエーシスを始めるために。
ポイボス・アポローンの名で呼ばれた
アポロンにちなんで、
その由来がわからない言葉
「ポイボス」とは、
おそらく太陽神であり、明るい光であり、輝きである
またアポロンの別の名でもある。

ポイエーシスとは、つくること。
詩を作ることもポイエーシスであり、
大工が家を建てるのも、
テクネーという技術により打ち立てられるものは、
みなポイエーシスの賜物だ
ポイエーシスは創造行為だ。

そこで、ポイボス・ポイエーシスを
明るい創造、
光の生誕、
太陽神のものづくりを
歌おう。

明るさと輝きを言祝ぎ、
光をもたらし、
万物の理(ことわり)を創造のなかに喜ぶ
ポイボス・ポイエーシスを始めよう。

そして、その一歩目は、
ホメロスにならい、怒りを歌うことからはじまる、
なぜそうなのか、のちにわかる

イーリアスの冒頭はこうだ
"詩の女神、ムーサイたちよ、われを助けよ
アキルレウスの怒りを歌え"
英雄の持つ怒りとは、

すなわち、悲しみと苦しみ、涙と怒り
たえがたい苦悩と
不条理のもたらすもの
そこで人間は大地に根ざす

その大地の懐深くから
太陽が昇るだろう
そこにポイボス・ポイエーシスはある