この写真は、詩の図書館(note)
「シェイクスピアは、『リチャード三世』が好きなんですよ」
「そうなの? 風采のよくない男が、王にのしあがっていく悲劇だよね」
十年以上のつきあいで、初めて聞いた。
彼は辛酸をなめて生きてきた。
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僕が学生の頃、二十歳の後輩と本の話をした。
彼女は実家の状況がよくないらしく、友達の家を転々としていると言った。
「木村さん(僕のこと)は、萩原朔太郎より高村光太郎ですよね」
突然、そう言われた。僕には貴族的なところがあり、朔太郎の「月に吠える」ような詩はわからないだろう、という意味だったのかもしれない。
「それで、君の好きな本は?」
「シェイクスピアの『オセロー』」
黒人の王オセローが、穏やかで理性ある統治をしていたのに、佞臣のイアーゴーに騙され、術中にはまって、嫉妬に荒れ狂い、妻のデズデモーナを絞め殺す話だ。
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仕事の話をしていた時の話。
「この伝え方では、一般のひとにはなかなか伝わらないかもしれないね…」
と僕が言うと、いつも笑顔と気遣いをたやさない女性が応えた。
「大衆にはわからないでしょうね」
大衆という言葉選びに、「ん?」と思ったけれど、表には出さなかった。
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本を通じて、文学や深い文化を通じてしか伝わらないこと、それによって一瞬のまなざしのように伝わることもある、と思う。
というわけで、詩の図書館へもぜひ遊びに来てください!