2012年11月20日火曜日

【童話】居眠り加湿器


ぼくは加湿器。北国のマンションに住んでいるんだ。シュッシュッと白い息を吐き出すのが仕事さ。それで、部屋の湿度が高くなると、いっしょに住んでいる青年が喜ぶんだね。

だけど、どうやらぼくはなまけものだと思われている。それどころか、こわれているとか、ぬかすんだよ。こわれてなんかいないさ、ただ、ちょっとぼくは居眠りが得意なんだ。こう、電源が入ってフウフウやり始めるだろ、しばらくすると眠くなってきちゃう。ときには、シュワッとやると、もう居眠りさ。こっくりこっくり始めちゃって。

そういうときはね、赤いランプを灯しておくんだ。すると、あいつは「もう給水か?さっき飲ませたばかりじゃないか」なんて、言うようだけど、ぼくも眠いからよく聞こえない。水はたっぷりくれるんだ、いいやつなんだよ。ぼくもごくりごくり飲むさ。

おっと、揺らすなよ!目が覚めちまう。

ところで、ぼくは超音波式らしい。そういうのが、おなかのとこについている。それはね、ヒーター式みたいに電気を食わないんだ。ぼくは節約家なんだよ。たいして電気おじさんのお世話になろうとは、思っちゃいない。ヒーター式の友達は、ばいきんがつきにくいし、部屋の空気も温まるんだから、と息巻くけれど、ぼくはああいう湿っぽいのは好かないね。

ふああ、こう、一生懸命おしゃべりしていると、ねむたくなってこないかい?あくびが出るんだが、これは加湿器の本来の機能じゃないんだ。白い霧も出ない。もうちょっと洗濯物でも干せばいいと思うよ。ほら、ぼくが汽車ぽっぽみたいにがんばらなくても済むだろう。ああ、もう夜んなっちゃった。そろそろ、彼も寝るんじゃないかな。一足先に、休むとしようか。おやすみ。