2014年4月10日木曜日

雨と木曜日(2)

すずかけの実を割ったところ。

円山公園で、雪のなかに小さないがぐりに似たものを見つける。茶色いとげとげ(やわらかい)に覆われたまん丸の実。それはすずかけの木(プラタナス)の実だ。プラタナスはフランスの小説にも出て来る。僕は北海道に来て初めて見たけれど、大きな木で、背が高いだけでなくしなる枝を横にも広げる。その先にぶらさがっている小さな実。ぽとりと雪のなかへ落ちる。

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札幌の円山(まるやま)には雰囲気のある喫茶店がたくさんある。それも、隠れ家風であったり、小道の先に佇んでいたりする。円山の珈琲は美味しい。ところで、僕は俳句をやるのだが、仲間には「俳号」をもっているひとがいる。「松尾芭蕉」や「与謝蕪村」のようにひなびた名前をつける。俳句のペンネームだ。あるとき、僕もつけようかと考えた。結局、いまも本名のままだけれど、「円山珈琲」なんてよかったかもしれない。

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『おとぎ話の古書案内』という本に出会った。装丁がいい。ぱらぱらとめくると、絵のなかに穴が開いていて向こうのページの絵と重なっていたりする。素敵じゃないか、と思って文も読むとくわしくて読みやすい。19世紀の絵本の始まり(イギリスがとくに発祥の地のようだ。)から解き明かす。解説・監修の海野弘さんが博識な文章家のようだ。



【書誌情報】おとぎ話の古書案内、解説・監修 海野弘、パイインターナショナル、2012