2014年4月24日木曜日

雨と木曜日(4)


公園の雪はほとんど解けた。これは、小さな雪山のあった場所。いまは水たまりが海のようになっている。この公園ではよく俳句を詠む。ある俳句評論家は「俳句は挨拶だ」と言っていた。自然への、句会をする友への挨拶。なるほど、その話を聞くと西洋の十字を切る動作を連想する。それも宗教的な意味での挨拶だろう、と。挨拶とは、ものやひとに心を向けて敬意を表することだ。

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一日に何杯も珈琲を飲みながら仕事をするひとがいるけれど、体が丈夫なのだろうか。少なくとも僕は、珈琲には体に負担をかける部分があると感じる。それはアルコールと似ているのだろう。連日、たくさん飲むものではない。だから、珈琲の愛飲家たちも「休肝日」ならぬ「休琲日」(きゅうひいび)を設けてみたら、よいかもしれない。とりあえず試してみたところ、翌朝の珈琲はとびきり美味しかった。

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「ベルリン天使の詩」という映画を観た。ベルリンの壁が崩壊する2年前、ヴィム・ヴェンダース監督がベルリンを舞台に撮った。人間には見えない天使たちが図書館に集い、広場で地下鉄で屋上で、孤独なひとびとを見守る。モノクロの映像が美しい。途中、天使のひとりが人間の女性に恋をして自らも人間になる。そこから映像はカラーに変わる。さあ、人間になって初めて彼のしたことは、一杯の珈琲を屋台で飲むこと。温かそうにカップを包んで、笑顔を浮かべる。