2014年7月31日木曜日

雨と木曜日(18)

2014.7.31.

 紫陽花は東京では6月に咲いて、雨の中でしっとりと輝くようだった。いま、からっと晴れた札幌ではゆっくりと色あせる紫陽花がドライフラワーを作るように街角で心なしか小さくなる。そのうち、ぽろりと落ちてしまう花(萼)もある。このまま、秋まで(札幌の秋はお盆が過ぎるとやってくる、涼しさだ)もつものもあるだろう。いつも思い出すのは、「紫陽花に秋冷いたる信濃かな」(杉田久女)の名句であり、信州に思いを馳せる。

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 ダブルブレンド、という言葉を発明した。かんたんに言うと二重にブレンドすることで、かんたんに言えるなら「二重ブレンド」と言えばいいじゃないか、と思うが、そうかもしれない。いま、家にはふわっとした香り豊かな浅いブレンドと、コクとボディの強い深煎りブレンドがあるのだが、どちらも少し飽きたので、これらのブレンドをさらにブレンドしてみたら、香りもほどよくしっかりとコクも出たブレンドが出来上がって、錬金術師の気分だ。
 
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 大坊珈琲店。表参道の交差点そばに立つビルの二階にある、隠れ家のようでいて喫茶筋では有名な珈琲店。店主がロースターを回し、ネルドリップで一流の濃厚な珈琲を淹れてくれる。長い年月のうちに文化人が集い、静かにおしゃべりをする場所となった。僕も一度だけ足を踏み入れたことがあり、それは「生意気」だとご年配の方から笑われた。その方が見せてくださった本。活版印刷、布張り、箔押しだそう。店主の語りと常連客の手紙から成る。



【書誌情報】『大坊珈琲店』、大坊勝次、誠文堂新光社、2014