2014年11月12日水曜日

オコタンペの静謐

本を開いていて、心動される文章に出会ったとき、そっと本を閉じてしまうことがある。
そのときには、それ以上を読み進めることができない。
受け止める器の方があふれてしまって、それ以上、文字が入らなくなるからだ。

同じことは太極拳の動画を見ていてもある。
目で見続けることはできても、そこにある動きの容量が大きすぎるので、もうわからなくなるから、画面を閉じてしまう。

それは自然のなかを散策していても起こりうるし、実際、景色があまりに緻密で素晴らしく色合いも形も微妙な変化を含み、美しさにあふれているように思うがために、散歩していてくらっとする瞬間もある。

そこで、心のどこかにオコタンペのような湖があれば、と思う。

オコタンペは札幌の南、支笏湖の北にある「秘湖」のひとつだ。展望台から、遠く青緑の水面を少しだけ覗くことしかできない。

多くのひとに照らせば「ささいなこと」に、心の樹冠を動かされながらも、根の方にあるオコタンペは静謐なままでいてほしい、と。