2015年1月27日火曜日

【俳文】札幌便り(27)



東京の年の瀬から、今回の札幌便りは始まる。出版社との打ち合わせなど控えていたが、うまくゆかず。あれこれと困難の重なる。

いくつかの悲しみ深し十二月

気づけば、12月30日の夕空。

かばかりに夕陽まぶしき小晦日(こつごもり)

31日は池袋の炊き出しにゆくも、時間が合わずにこれまたうまくゆかない。体調をすこし崩して家路につく。

半月の落ちゆくほどに除夜の鐘

上弦の月が落ちるほど除夜の鐘は深まる。

正月はふつうのひとになりたしや

いろいろと変わった人生の半ば、半ばにも足らず。たまには「ふつうのひと」を願うも俳諧のおかしみであってほしい。

ゆく凧に下げられている子供かな

いかにも可愛く、「アナと雪の女王」の柄の凧を(親御さんに)揚げさせられているが、ぼんやりと立ってしまう。

鳩一羽一羽きりにて枯野ゆく

土の上を歩いてゆく。

おじいちゃんひとり坂ゆく初詣

自分の祖父を思えば、ひとり坂をのぼるも、背中に悲しさ背負いしかと感じ入る。そのあたり、近所の道をゆけば、子供のいたずら書きも見つかる。

元日の朝にチョークでたちつてと

この「たちつてと」は、夜まで残っているだろう。家の前の川はいつも通り穏やかに流れている。

川よりもゆっくり歩け冬の月

そして、また枯れ木のうえに見上げる月は。

枯枝にかかりて青の月まどか

どうして東京の空は冬にこうも青いのか。翌日、川には青緑の小鳥を見つける。

着膨れてしゅっと翡翠(かわせみ)見かけたり

しゅっと飛ぶ様は寒くないのだろうか、翡翠は涼しい笑顔。

ヒヨドリを置いて立ち去る川原かな

川原の枝に止まったヒヨドリとふたり、佇んでいたが、僕がさきに立ち去った。ほんの2メートルほどの距離であった。

霜の上立てるゆかしさ東京や

東京を喜ぶ。霜の上に立つ、というのは北海道では難しい。すぐ雪に埋もれてしまうからだ。そんな札幌へ帰って来た。

ソーサーに砂糖こぼれて雪化粧

もちろん、と言うべきか、コーヒーカップの乗ったソーサーである。茶器にもこだわってしまう。

オレンジの灯やさし雪あかり

札幌の一月もこれまた好きだ。