2015年3月17日火曜日

【ご報告】本のカフェ・ザ・ビッグイシュー

2015.3.15.(日)10:30-12:00
札幌カフェYOSHIMI(赤レンガテラスB1F)
参加:6名
300円+ワンオーダー


今回は、特集で『ビッグイシュー』を取り上げた本のカフェです。ビッグイシューはホームレスが販売することで収益を上げられる仕組みの雑誌。ストリートペーパーと呼ばれ、書店には並ばず「路上」で売られます。




さて、そんな『ビッグイシュー』の日本での歴史は…? 日本での創設者が語る『ビッグイシューの挑戦』を主宰の木村が紹介しながら、みなで交流をはかりました。

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1991年、イギリスで『ビッグイシュー』が創刊される。
2003年、『ビッグイシュー日本版』発刊される。
2004年、月1回から月2回発行へ。
2007年、200円から300円への値上げ。これにより黒字化。

こうして、年表を作ると順調そうに見える日本版。しかし、日本での創立者、佐野章二さんが起業の前にあらゆる専門家に訊ねたところ、「それは99%じゃなく、100%失敗する」「否定材料なら、トラック一杯分くらいある」といったユニークな否定の回答がすべてだったとのこと。


それでも、イギリス版、スコットランド版ビッグイシューに魅せられた女性が、「佐野さん!私『ビッグイシュー』やりますから!」と宣言。佐野さんの娘も渡英して、大賛成。

周りにいる女性の応援の声も厚く、ビッグイシュー日本版は、発案のときから女性の力が大きかったという。いまでも購買者の7割は女性、しかも20代、30代の女性が多い。


スコットランド版の編集長からは「始まってから6ヶ月間は、一日16時間、週に7日働け」とアドバイスされたが、実際には6ヶ月目以降もそのペースで終電に乗っていたという。

しかし、いよいよコンセプトも確定する。既存の雑誌編集者をリクルートせず、独自に編集部を立ち上げる。その理由は、「役に立つ情報誌」ではなく、「意外性を極めるポストエンターテイメント雑誌」を作るため。そのほか、「国際雑誌」(世界の動向がわかる)、「若い世代が時代のマイナス条件を踏み台にできる」(世界各地のユニークな試み)「映画俳優からホームレスまで」登場する、といったユニークなコンセプトに貫かれる。

これらのコンセプトが実際にどう紙面に表れているかは、ぜひ1冊買って確かめてみてほしい。


ホームレス販売者への研修もある。たとえば、「お釣りはいらないよ」と言われたらどうするか。佐野さんは絶対にお釣りを渡せ、と指導。「もろうたら寄付やからな。寄付する人、される人、上下関係ができるからな。でも僕らは商売をしてるんやろ。商売は対等やろ」。

こうした姿勢は、元祖イギリス版の創設者の思想、「チャリティではなくビジネスを」が下敷きになっている。その精神は日本版にもみごとに引き継がれた。


【書誌情報】
『ビッグイシューの挑戦』、佐野章二、講談社、2010

こうした設立の経緯のほか、「おじさんホームレス」からリーマンショックの時期を経て「若者ホームレス」が大きな問題として表面化したことについても本書では触れており、本のカフェでもしゃべったが、長くなるのでここでは割愛。

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この後は、ビッグイシューさっぽろ(札幌での販売開始は2007年)に立ち上げのときからかかわっている矢橋さまから札幌での歴史について、15分ほどお話ししていただきました。初めは大通駅構内(冬の風雪をしのげる)の目立たないスペースで販売を開始。地下を管轄する交通局との関係が改善されてからは、販売環境も良好になってきた、とのこと。


最後の30分は、10冊ほどのバックナンバーを手に、みなさん楽しく語り合いました。わいわいがやがや。


それから、地下歩行空間(チカホ)の販売ブースを訪ね、札幌駅西口の販売者を訪ね、それぞれの場所でビッグイシューを購入しました。にぎやかな楽しい会になりました。



お越しくださった参加者のみなさま、ビッグイシューさっぽろの矢橋さま、取材に来てくださった同じくSさま、販売者のMさん、Fさん、ほんとうにありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。第2回目も開きたいと考えています。

主宰・文責 木村洋平
写真:矢橋さま、Sさん、木村