2015年3月26日木曜日

タゴールの詩集より(1)



ギーターンジャリ」はインドの詩人タゴール(1861-1941)の代表的な詩集。「ギータ」は歌、「アンジャリ」は合掌。岩波文庫には、ベンガル語からの韻文訳が載る。

今回は、そのなかから一篇を紹介。(ギーターンジャリは、150以上の短い詩から成る。)

21

知らず 世の始(はじめ)より 幾度か
生命(いのち)の河に われを浮かべし
君よ はた 幾何(いくばく)の家に 道に
  歓喜(よろこび)を 生命に 授けし

幾度か 君 雲の陰に
かく微笑みて 立ち
朝日影に み足 踏まして
  優しく 頭(こうべ) かき撫でし

このわが眼に 見慣れたり
幾度か 幾世(いくよ)にか
新た新たの光明(ひかり)のうちに
  相(すがた)なきものの相を
  
人知らず 幾何の代(よ)に
生命を 満たせし
苦と楽を 愛と歌を
  幾何の甘露の雨に
  
*「君」はタゴールの詩においては、神を指す。ヴィシュヌのことであるらしい。
  
【書誌情報】
『タゴール詩集 ギーターンジャリ』、渡辺照宏訳、岩波文庫、1977