2015年4月19日日曜日

雨と木曜日(43)

2015.4.16.


舘野泉さんのアルバム「記憶樹」を聴いた。ジャケットもいいお顔をしていらっしゃる。もう70代。「左手のピアニスト」として再起されて9年。現代の作曲家から彼に献呈された曲も多く録音されている。アルバム・タイトルになっている「記憶樹」のひと連なり(10曲)も素晴らしいが、間宮芳生さん作曲の「風のしるし」も僕はとても好きだ。穏やかな情熱をもって「音楽している」様子が、静かに伝わってくる。聴き応えがある。


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珈琲を飲みすぎるとおなかをこわしやすい、と言われる。空きっ腹に朝、ごくっと、とくに濃い珈琲なんてよくないようだ。と、思っていて思い出したのがベートーヴェン。彼は毎朝、60粒の珈琲豆を数えて淹れていた、という逸話が有名だが、2〜3杯分をまとめて落としていたのだろうか。午前中はろくに朝食も調理せず、コーヒーマグを片手に作曲していたのじゃないか。それではおなかもこわすよなあ…と腹痛に悩まされた音楽家を想う。

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伝説の旅人と言われるブルース・チャトウィンの『ソングライン』を読んだ。ソングラインはオーストリアの「道」で、ただしそれはアボリジニの歌によって記されており、現代の僕らにはわからないものだ。彼らは「ウォークアバウト Walkabout」という放浪に出るとき、ソングラインを辿るのだと言う。本は、チャトウィンの実体験をもとに再構成された小説であり、そこに彼のこれまでの世界旅行で得た知見の抜粋が差し挟まれる。ユニークな構成。


【書誌情報】
『ソングライン』、ブルース・チャトウィン、北田絵里子訳、英治出版、2009