2015年4月24日金曜日

【本と珈琲豆】 『鳥のように、川のように 森の哲人アユトンとの旅』


著者はジャーナリストで、アマゾンに住む賢人を訪ねる。賢人アユトンはインディオ(南米の原住民)であり、原住民の集落を旅して回りながら情報を交換したり、手助けをする人物であった。
アユトンの語りから印象的な部分を3つ抜き書きする。

「私たちは子供にこう教えるのです。『地上にやってくる時には物音をたてずに鳥のように静かに降り立ち、やがて何の跡も残さず空に旅立っていくのだ』と。『人は何かを成すために存在する』という西側哲学は銅像を作り、人の偉業を記録に残そうとしてきた。だけど、"人は何もしないために存在していてもいいじゃないか"、と思うのです。生命を受け、生きていること自体が素晴らしいことなのですから」

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「旅は人生の教訓であり、学校なのです。素晴らしい人とは、良い歌を作り、歌える人。感情豊かでユーモアと恥じらいを持ち、母の愛情を表現できて、孤独な子供と一緒に泣くことができる人」

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……周辺では子供たちが泥まみれになって遊んでいる。
「ああした遊びは我々にとって大切なのです。地球上での遊びや好奇心が満たされた時、我々は安らかな気持ちでこの世界を捨てる準備が整ったと思えるようになります。そうなれば、残った屍を灰にしようが、粉にしようが構わなくなります。土に埋められようが、海に流そうが、風に吹かれて風化しようがです」

「西側」に対しても攻撃的でない穏やかなアユトンの語りが深い思想をみせる一冊。

【書籍情報】
『鳥のように、川のように 森の哲人アユトンとの旅』、長倉洋海、徳間文庫、2009
*この作品は1998年10月徳間書店より刊行された。