2015年4月3日金曜日

【本と珈琲豆】『社会を変えるを仕事にする』


〜本と珈琲豆は、書評コーナーです。〜


若手の社会起業家として有名な駒崎弘樹さん。病児保育といういままで見過ごされてきた社会問題に注目して「NPOフローレンス」を起業。保育園では預かれない、病気の子供の面倒を見る事業を始める。主として女性の「仕事と育児の両立」を可能にすることが社会的な目標だ。


そんな駒崎さんが28歳の頃、来し方をふり返ってユーモラスに穏やかな情熱をもって語る、フローレンス誕生までの履歴。

もともと、駒崎さんはエリートで学生時代からITベンチャーの社長を務めていた。ところが、お金儲けの道を進んでゆくことに疑問を感じ、「社会の役に立ちたい」という思いを抑えられなくなる。そんなとき、「病気の子供の預かり先がないばかりに、仕事を失った」ある母親の話に感じるところがあり、「病児保育」の事業を立ち上げることを決意。

都内のある区で、町内会のおじさんと仲良くなり、役所の課長には話を通し、いよいよ場所も確保した矢先、区長のひと言で、理由も不明なまま、施設を使う許可が下りない事態に。一時は涙を流し、自暴自棄になりかけるが、NPOのアドバイザーから「施設なしで」やってみる可能性を示唆され、在宅のベビーシッターが病児を預かる、無施設型のサービスを考案。

その後も紆余曲折はあり、同業者や役所から筋の通らない非難を浴びながらも、頼りになる諸先輩、協力者の助けを得て、事業を軌道に乗せてゆく。そして、ついには自分の事業を足場に、社会に大きく発信してゆく道を構想して、本を終える。

この本が出たのは2007年ですが、駒崎さんはその後も「社会起業家」として先端を走り続けている。魅力的な人柄の伝わってくるような本で、とても楽しい。

「フローレンス」ホームページ:http://www.florence.or.jp/

【書誌情報】
『社会を変えるを仕事にする』、駒崎弘樹、英治出版、2007