2015年6月25日木曜日

雨と木曜日(52)

2015.6.25.


毎週、木曜日更新のエッセイ。今回は、「セレネッラ」と呼ばれるリラ、グリーンコーヒー、『窓ぎわのトットちゃん』の三本立て。グリーンコーヒーはちょっと貴重な情報です。



須賀敦子さんの『トリエステの坂道』を読んでいたら、「セレネッラの咲く頃」という一章に出会った。セレネッラとはどんな花だろう、と思うと、ライラックのことらしい。彼女が住んだイタリアで、洒落た人々はフランス語風に「リッラァ」と発音したと言うが、鄙びた言い方では「セレネッラ」と呼んだという。セレネッラ、「小さなもの」につける語尾がついて、華やかさにも欠ける響きという。それでも、ひときわ香ったそうだ。

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グリーンコーヒーなるものを知った。アメリカではセレブの間で人気というが、ネットでは日本語の情報はほとんどない。最近、詳しい友人に話を聞いたところ、日本では小さな会社がネットワークビジネスの手法で広めている途中だそうだ。2年後の小売を目指しているという。珈琲の生豆から体によいとされるエッセンスを抽出したサプリメント。一本1万円以上するボトルに100杯分を圧縮して詰める。水に噴射すると麦茶のようなコーヒーに変わる。


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『窓ぎわのトットちゃん』を読んだ。子供の頃に読んで感銘を受けたひとも多いみたい。ぼくは初めて読んだのだが、3〜4ページで完結する短いエピソード集。トモエ学園という戦前のフリースクール小学校で、いまで言う多動のような変わり者の「トットちゃん」がおもしろおかしいことをやらかす。微笑ましくやさしいお話は最後に戦争のときを迎えて、学園が東京大空襲で焼ける場面に終わる。そのときの校長先生の言葉は……。


【書誌情報】
『窓ぎわのトットちゃん』、黒柳徹子、いわさきちひろ・絵、講談社青い鳥文庫、1991