2015年6月8日月曜日

【本と珈琲豆】新訳『神学政治論』を読む(3)

【本と珈琲豆】新訳『神学政治論』を読む(2)よりつづく。

さて、最後の1/3では、政教分離が説かれる。スピノザは、「至高の権力の担い手たち」(政府)に誰もが権利を委譲する(全面的にではない)ことで、国家ができ、国家は臣民の安全を守る、という一種の「社会契約説」を描く。そして、ここに宗教の権威者たちが介入すべきではないこと、そうすればよくない結果が起きることを実例を交えて説明する。


こうして、哲学と神学が分離され、政治と宗教も分離されたあとで、最後の20章において、思想と言論の自由(哲学する自由)について、それが国家にとって重要である論点に至るが、その示し方はやや付け足りの議論にも思える。現実的にはそれがいいのだ、という主張であって、これまでの議論の総決算という趣、『エチカ』に見られるような体系化はそこにはない。ともあれ、これをもってさまざまな論考から成る書物は閉じられる。

【書誌情報】
『神学政治論』(上下)、スピノザ著、吉田量彦訳、光文社、2014