あらすじ:国際自由学園で「ゆる古楽部」を立ち上げた佐藤りゅーと。少しずつ仲間は増えるが、ルネサンス合唱部の山中タリスとはすれちがってしまう。とはいえ、合唱部の原田フローラ先生は味方になってくれる。
ちなみに、第一幕はこちら。
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先日、原田フローラ先生の研究室を泣いて飛び出した山中タリス。俺、佐藤りゅーとはどうしようかと考えた末、とりあえずルネサンス合唱部「ジョスカン・de・play」を見学することにした。
原田フローラ先生が、みんなの前に立って爽やかに指示を出している。
「そこはもっと、ふろ〜ら〜って花開く感じで!」
「グロ〜リア〜♪」
指導法は謎だが、合唱はとてもきれいだ。
部活動が終わると、山中タリスが「あ、りゅーと君、うちの合唱部入るの?」と聞きに来た。「入らないけど…」「よかった〜」と胸をなでおろす。悪かったな。
「わたし、山中タリス。ジェズアルドじゃなくて、タリスだから」
こないだ、名前をど忘れしたのを根にもっているらしい。
「わかってる。もうまちがえません。そういや、タリス・スコラーズ来日したよな」
山中の表情が輝く。
「タリス・スコラーズ聴きに行ったの?」
「行ったが…」
「わたしも行ったんだよ!素晴らしかったよね」
「タリスコ、ほんと綺麗だった」
「なんだか照れるな」
なんでだよ。そこへ、フローラ先生がやってきた。
「これから買い出しに行くんだけど、君たちもついてくる?」
「行きまーす」と山中。
「俺も時間はありますけど」
「よし、うちの御用達スーパーに行くよ」
フローラ先生がウインクして、俺たちは出発した。
「着いた。ここよ」
業務用スーパー、という看板。
「ここって、冷凍肉とか、大量購入するとこ…?」と俺。
「そうそう、ほらいこうよ〜」
山中タリスは妙にはしゃいで、店のなかに飛び込んでいる。
「宴会でもやるんですか?」
しかし、フローラ先生もいつの間にか、向こうで店長らしきひとと話している。
「頼んでおいたもの届いたかしら?」
「ええ、もちろん!こちらです」
店長は30枚くらいのCDをもってきた。
「はい、ノートル・ダム・ミサ曲。同じの30枚。αレーベルのやつね」
「ちょっと高いんだよね〜。でも、質がいいから買っちゃう!」
「大量購入でお得ですよ!」
と、にっこり店長。
戻ってきた先生に一応、聞いてみる。
「ここ、スーパーマーケットじゃないんですか」
「ほら、ギヨーム用スーパーだから」
……。俺もなんとなくそんな気はしていたが、先生はにこやかに続ける。
「当然、マショーもあるでしょー」
はいはい、ギヨーム・ド・マショーも売ってるのね。なんだよここ。
第十幕「フローラ先生のお見合い」につづく。