2015年7月23日木曜日

雨と木曜日(56)

2015.7.23.


今回は、カリンズのピューレの教訓〜珈琲を見る眼〜青木やよひ『ベートーヴェンの生涯』。


カリンズ(すぐり)のピューレをいただいた。ラズベリーのような色と酸味。炭酸水で割ると美味しいらしいが、まだ試していない。真珠のようになめらかでルビーのように美しく輝くピューレをパンにつけようとスプーンで取りながら、つい先日、夏のセールで買った真っ白で生地のよいTシャツを着ておりすがすがしい気分で、スプーンをひっくり返してピューレをぶちまけた。ラテン語で刻みたい。「カリンズのピューレを食べる時は黒いシャツで」。

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珈琲眼。こーひーがん、というものを提唱したい。僕は最近、珈琲屋さんでガラスケースの向こうの豆の色と輝きから、表面のオイルの加減や煎り具合を見抜き、直感的な判断で、「この珈琲豆は新鮮でおいしいにちがいない」(そして、僕の好みだろう)ということがわかるようになってしまった!SFの世界に到達したかもしれない。香りもかがず、テイスティングもせずにわかるはずもなさそうだけれど、珈琲を見る眼というのもあるかな?

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青木やよひさんは、ベートーヴェンの死後みつかって話題を呼んだ、出されなかった手紙の「不滅の恋人」が誰かを突き止めたことで世界的に評価された研究者。その青木さんが50年来の成果をまとめて、一冊の伝記にしたのが『ベートーヴェンの生涯』(平凡社新書)。かなりベートーヴェンおよび関係者に好意的な解釈で、穏やかに描き出される200年前の人生。とりわけ、孤高のイメージも強い作曲家の恋人遍歴を描く手腕は見事!


【書誌情報】
『ベートーヴェンの生涯』、青木やよひ、平凡社新書、2009