2015年7月9日木曜日

雨と木曜日(54)

2015.7.9.

今回は、「札幌のふしぎな気候」〜「斎藤珈琲と夏ブレンド」〜『武満徹エッセイ選ーー言葉の海へ』の三本立て。


札幌のふしぎな気候。春先はあっという間に雪の解けた暖冬だったが、夏は涼しく始まっている。ある意味では、一番過ごしやすい。僕は寒がりだが、7月に入ってフリースを着たり、ストーブをつけたりしている。朝晩が冷えるのは、道民として長いひとも同じらしい。さすがに、昼間の日差しは厳しくなってきて、肌が焼かれる感じはあるけれど、梅雨もなく、このままひと月半もすれば、お盆を過ぎて秋なのか、と思うと貴重な夏だ。

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斎藤珈琲、札幌のどこかで飲んだことはあるが、豆を初めて家で淹れる。深煎りのコク派だ。「すっきり」のブレンドだったが、それでもぐっと来る。けれど、酸味というよりもほんとうに「すっきり」した後味の珈琲なので、かつ濃い味となると、夏にぴったりだ。「冬は深煎り」と以前、(「春は曙」風に)書いた気がするが、夏も深煎り、ただし「こっくり」とせずに、きりりとしまるような焙煎が似合うかもしれない。夏ブレンド、いい響き。

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『武満徹エッセイ選ーー言葉の海へ』。編者の小沼純一さんは、重複を恐れずにテーマを絞り込んだ選で、これはこれでよいと思った。わたしたちは「宇宙的な卵」(ユニヴァーサル・エッグ)を妊んでいる、という講演。「沈黙と測あえるほどに強い、一つの音に至りたい」という、かの有名な台詞。「知識や教養」として音楽を理解することの誤り。ベートーヴェンの弟子になりたい、という本気のユーモア。そして、「希望」「祈り」である音楽。


【書誌情報】
『武満徹エッセイ選ーー言葉の海へ』小沼純一編、ちくま学芸文庫、2008