2015年8月27日木曜日

雨と木曜日(60)

2015.8.27.


今回は、日記の話〜すばらしくおいしい珈琲〜ファージョン『ムギと王さま』。


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日記をつけている。もう十年以上になる。2年前に万年筆を手に入れてからは、万年筆で書いている。その方が、思いもにじむからだ、なんてレトリックだけど、水で濡らさないように(字が消えてしまう)気をつけないとならない。ぼくの日記は、十年来、哲学メモと混ざっている。しょっちゅう、思索的な文言が差し挟まれる。そればっかりの時期もある。夜につけることが多い。気持ちが落ち着くからだ。一年後に読み返すと可笑しい。

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すばらしくおいしい珈琲を飲んだ。どうってことはない。猿田彦コーヒーのとあるブレンド(100g 550円だった)を買って、それは浅煎り〜中煎りのさっぱりしたバランスのよいブレンドなのだが、落として飲んだ。朝だったからか、実家で気分が変わっていたからか、それともなんだったのか、すばらしい味がした。香りがすーっと立って、舌の上をなめらかに流れ、味わいは爽やか。濁りなく喉越しよく、すとんと飲んだ。幸せ。

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勧められるままにわくわくして『ムギと王さま』を読んだ。イギリスの作家、ファージョンの童話。訳者は石井桃子さんで、さすが上手に訳してくれている。ファージョンの童話はなんともふしぎ。教育的というわけでもなし、心温まるメルヘンでもなし、寓意や社会風刺でもなし。とはいえ、どこかに戦争の影を落としながら、それでいてまっすぐなファンタジー(空想)を展開する。小編も中編もぐいぐい読ませる。なんとも言えない。


【書誌情報】
『ムギと王さま 本の小べや1』、ファージョン作、石井桃子訳、岩波少年文庫、2001