2015年10月11日日曜日

【ご報告】本のカフェ第24回@札幌

日時:2015年10月10日(土) 19-21時
場所:詩とパンと珈琲 モンクール
参加人数:12人+主宰
参加費:1500円


今回は、よくお世話になっている「詩とパンと珈琲 モンクール」さんにて、特集などを組まないふつうの本のカフェを開きました。紹介される本は4冊です。



一冊目は、『花ものがたり(春・夏・秋・冬)』。ファンタジーや恋の話が好きだという紹介者さん。「花」をテーマに、世界の神話や民話を集めたこのシリーズを小学生の頃、よく読んでいたそう。お気に入りは、冥界の王ハデスがペルセポネを連れ去ってしまう話。それから、蓮の実を食べると故郷・家族のことを忘れてしまい、それでもおいしくて食べ続ける、というギリシャ神話も。少女漫画風のイラストも好み、とのこと。



二冊目は、『それぞれの少女時代』。現代ロシアの作家、リュドミラ・ウリツカヤの短編集。ロシア文学というと、プーシキン〜チェーホフの1800ー1900年に偏りがちな日本にあって、彼女は翻訳者にも恵まれ、5,6冊の邦訳がある。さて、作品は1950年代、スターリン時代の少女たちを描いたもの。生まれや宗教にそれぞれの背景があり、深刻さもありながら、チャーミングな印象を残す。歴史的なディティールも、純文学としても楽しめる本。


三冊目は、『西瓜糖の日々』。村上春樹の『風の歌を聴け』が好きになってから、アメリカ文学を読むようになったという紹介者さん。ブローティガンやヴォネガットを好むようになる。本書は筋らしい筋がなく、詩のような断片を書き連ねて長編に仕立てあげている。こういう意味のわからない話も面白い。「それが私の名前だ。」をリフレインする箇所を、静かな低い声でゆっくりと朗読してくださいました。原書にも当たったけれど、翻訳も抜群、と。


四冊目は、シェイクスピア『テンペスト』。紹介者は、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「テンペスト」に触れて、作曲者が「この作品を理解したいなら、『テンペスト』を読め」と言ったという逸話を紹介しつつ、たしかに戯曲とソナタに関連性があると指摘。嵐のなかで座礁するシーンから始まる『テンペスト』は、魔法を使った復讐劇となるのだが、シェイクスピアの最後の作品としてユニーク。ピアノ・ソナタをブレンデル(p)の演奏で流して締める。


その後は、フリータイムとなり、21時終了の予定でしたが、結局みなさん、そのまま二次会に残られました。ワイン、シャンパンの差し入れもあり、モンクールさんのおいしいパンがざっと並び、みなさん酔いながら、食べながら、歓談のひと時。




23時頃から解散ムードになって、終了しました。いつもながら温かくもてなしてくださったモンクールのオーナー、全体をうまくサポートしながら写真も撮ってくださった内村さん、そして、参加者のみなさん、とりわけ力と愛情を込めて本を紹介してくださった4名の紹介者さん、ほんとうにありがとうございました。


主宰・文責・写真:木村洋平
写真・協力:内村さん

【書誌情報】
『花ものがたり』、立花えりか著、もとなおこ絵、小学館、2001(新装版)
『それぞれの小女時代』、リュドミラ・ウリツカヤ、沼野恭子訳、群像社、2006
『西瓜糖の日々』、リチャード・ブローティガン、藤本和子訳、河出文庫、2003
『テンペスト』、シェイクスピア、小田島雄志訳、白水社、1983
『テンペスト』、シェイクスピア、松岡和子訳、ちくま文庫、2000