2016年2月17日水曜日

哲学カフェを開くためにーー【書評】「ソクラテスのカフェ」について。


哲学カフェに興味をもって元祖の本を手に取った。『ソクラテスのカフェ』だ。マルク・ソーテはパリのオープン・カフェで、1992年に「ソクラテスのカフェ」を始めた。

イベントのようだが、入場料もないし、申込もいらない。ただ、ソクラテスが街角でアテナイ人たちを相手に質問したように、マルク・ソーテの問いかけから哲学談義が始まる、というもの。

たとえば、「暴力」がテーマの回。物に対して暴力を振るえるか、石ころに対しては?では、森林破壊は暴力なのか?といった問題が扱われる。哲学書を読んでいなくてもかまわない。参加者は口々に、考えをしゃべる。

著者は、ずいぶん嘲笑も受けたそうだが、哲学が死んでしまったかのような時代に、「質問すること」によって哲学を再興させたかった。日曜日ごとにひとは増え、100人を超えるまでになったという。


こちらの本も、タイトルは『ソクラテス・カフェにようこそ』。著者はアメリカで教師をしながら、非営利であちこちの土地を回り、哲学カフェを開く。マルク・ソーテの試みにインスパイアされたようで、いまは、これが天職と感じるという。

刑務所で在監者たちと、また、小学生や高齢者たちとの哲学カフェもある。テーマは「仕事」「我が家」「囚われ」「ほんとうの友人」「知恵、賢さ」など。問いかけと、哲学史的な知識による補足とを組み合わせて、著者はみごとに意見を引き出す。

その会話の実録が収められているのがこの本のよいところ。実際がよくわかる。マルク・ソーテの本は、世俗的で批判的で皮肉で頭の回るフランス人らしいエッセイになっており、やや読みにくい。

近々、哲学カフェを開いてみたいと思う。

【書籍情報】
『ソクラテスのカフェ』、マルク・ソーテ、堀内ゆかり訳、紀伊國屋書店、1996
『ソクラテス・カフェにようこそ』、クリストファー・フィリップス、森丘道訳、光文社、2003