2016年3月19日土曜日

哲学の夢

哲学の見果てぬ夢は、哲学の思考することがらが言葉によって十分に表現されることではないだろうか。


哲学の思考することがらとは、「世界」と「倫理」であり、「あらゆるものを含むこの世界とはなにか」という「〜とはなにか」の問い、そしてもうひとつ、「善く生きるとはどういうことか」すなわち「いかに生きるべきか」の問いだ。

このふたつの問いについて、哲学者は、それを言葉に言い表したいという衝動を覚える。それを叶えること、過不足のない十全な言葉で表現すること。

それは言ってみれば、論理を踏まえた詩作であり、かたちのない思考を言葉へともたらすこと、そう、詩人の仕事ではないか、と思える。哲学の本とは、一篇の詩である。

(もちろん、ロマンとかノスタルジーの叙情詩でもなく、民族の叙事詩でもないが……)。

そうして、自らの止まぬ衝動が終わることを見届けるのが哲学の夢ではないかな。