2016年6月17日金曜日

雨と木曜日(87)

2016.6.16.

木曜日更新のエッセイ。
今回は、ピクルスと紫陽花の季節〜朝に飲む一杯の珈琲〜『闇の奧』コンラッド。




ピクルスの季節だ。紫陽花が咲き誇り、朝の雫に濡れている。真夏日がしばしばで雨の少ない関東も、日陰と朝晩は涼しい。こんな時は、生姜の千切り、真っ赤なプチトマト、瑞々しいセロリを取り揃えて、えのきも混ぜちゃおう、ピクルス作り。まずはお湯を沸かして、瓶は煮沸、素材は軽く湯通し。たっぷりのお酢と生のオリーブオイルが体に染みる、にちがいない。一晩じっくり漬けて、二日目、三日目と味が変わってゆく。胡椒も多めに。

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幸せは「朝に飲む一杯の珈琲」。スヌーピーの漫画を読んでいると(50年代〜90年代の名作再編集シリーズ)、"THE HAPPINESS IS..."(幸せとは…)という台詞が何度か出てくる。だいたい、チャーリー・ブラウンが友達のスヌーピーを抱きしめているか、あるいはスヌーピーが甘いものを食べていたりするのだけどね。さて、朝は眠気覚ましでもなく、単なる習慣でもなく、一杯の珈琲を落として飲めると幸せだ。あるいは、喫茶店でもいい。


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コンラッド『闇の奧』を新訳で読んだ。ストーリーはかんたんだが、読み応えが言い表しがたい小説だ。装飾のある文体と馴染みのない世界(約100年前の中央アフリカ)と、クルツという謎めいた人物を巡るいきさつと。原題は、"Heart of Darkness" だが、Heart の訳し方も難しい。ともあれ、今回思ったのは、読みにくさの原因はもしかしたら、著者の若さも関係しているのかな、ということ。自分の大冒険への自負心が変形され、反映されている。

【書誌情報】
『闇の奥』、コンラッド、黒原敏行訳、光文社、2009