2016年7月26日火曜日

雨と木曜日(91)

2016.7.28.


木曜日更新のエッセイ。
今回は、旭川、喫茶ルルの思い出〜まぜこぜ珈琲豆〜ミヒャエル・エンデ。


去年の夏、旭川に旅行に行ったとき、ゲストハウスに泊まった。相部屋宿で、わいわいがやがや。夜はベニヤ板一枚挟んだ談話室から声が聞こえてくる。素泊まりなので、朝は食事処を探す。コンビニでもよいが、モーニングの喫茶店がすぐそばにあった。それがルル。昔ながらの喫茶店で、ゆで卵とトースト、小さいサラダにコーヒー。特別、凝ったコーヒーではないが、朝一番に喫茶店で飲むのは格別。日の光とともにいまでも思い出す。

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先日、こんな話を聴いた。「ブレンド珈琲では、豆の焙煎度を揃えた方がいい。焙煎の具合がちがう豆を混ぜると、味にまとまりがなくなる」。なるほど、浅煎りの豆と、深煎りの豆の混ざった珈琲を買ってくることがあるが、浅い酸味と深いコクがばらけてしまうような、分離した感じを受ける。でも、ひとり家で淹れるときは、その日の気分で好き勝手に焙煎度のちがう粉をまぜこぜにして、ざっくりとブレンドするのも楽しい。

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古本で『ミヒャエル・エンデ』を買った。講談社現代新書の柄に趣があった頃の。エンデの作品解説が主で、『ジム・ボタン』に始まり、『遺産相続ゲーム』『モモ』『はてしない物語』『鏡の中の鏡』と続く。ネタバレありなので、読み終えたひとに向いているかもしれない。そこここに、エンデが自身の作品について語った言葉が織り込まれ、エンデの思想と作品とを向かい合わせる。良書だと思うが、もう少し生涯と作家論が欲しいかな。

【書誌情報】
『ミヒャエル・エンデ』、安達忠夫、講談社、1988