2016年12月19日月曜日

【ご報告】本のカフェ第38回@東京、恵比寿


本のカフェ、ちょうど3周年を迎えました。恵比寿のカフェ・カルフールにて、いつもの通り開催です。


1冊目は、『チャリング・クロス街84番地』。主宰の木村が紹介しました。「書物を愛するひとのための本」。絶版本のみを取り扱う古書店と、英文学の愛書家との心温まる交流を伝える書簡集。


2冊目は、『おべんとうの時間』。エッセイ。ソトコトのロハス系出版社、木楽舎から出た人気シリーズ1冊目。阿部さんご夫婦が「みなさんのお弁当を撮らせてください」と呼びかけて始まった。北海道から沖縄、幼稚園から90歳のおばあちゃんまで。ふだんの手作り、素朴なお弁当を写真とインタビューで見せる。じーんと来て面白い。


3冊目は、『時計じかけのオレンジ』。15歳くらいの筋金入りのワルが逮捕されて、科学者に人格を矯正される。そこで、牧師の言う台詞に作者の意図が込められる。「選択の問題はどうなるのでしょう。彼には選択の余地がない。非行をやめるでしょう。道徳の問題は存在しなくなる」。『つながる脳科学』(ブルーバックス)によると、すでにある程度、こうしたディストピアは実現可能と言う。


四人目の紹介者さんは、2冊まとめて紹介。クリスマスシーズンということで「綺譚」もの。12世紀イングランドの書き手が記した奇譚集は、ヨーロッパを周遊して集めた驚異を記した本。くさらない孔雀の肉、子供をさらう妖怪、ビーバーやイルカといったいまでは馴染みの動物など。ユルスナール『東方綺譚』は、単行本の装丁が素晴らしい。訳もとてもよく、文章が美しい。光源氏を改題した小品もある。最後に待つ奇跡。

フリータイムでは、「チャリング・クロス街」はロンドンの中心地にあるよ、といった指摘、「ねえ」「おい」といった間投詞は英語にないので、どう訳すか(Hey, listen, tell me など文脈に応じて)といった話題が出ました。


年の瀬迫るお忙しい時期に集まってくださったみなさん、応援いただいたみなさん、どうもありがとうございました。それから、写真と受付を手伝ってくださったMさんにもお礼を申し上げます。


主宰・文責:木村洋平
写真:Mさん、木村洋平

【紹介された本】
『チャリング・クロス街84番地』、ヘーレン・ハンフ、江藤淳訳、中公文庫、1984
『おべんとうの時間』、阿部 了(写真)、阿部 直美(文)、木楽舎、2010
『時計じかけのオレンジ』、アントニイ・バージェス、乾信一郎訳、ハヤカワepi文庫、2008
『つながる脳科学』、理化学研究所 脳科学総合研究センター (編集)、講談社、2016
『西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇』、ティルベリのゲルウァシス、池上俊一訳、講談社学術文庫、2014
『東方綺譚』、ユルスナール、多田智満子訳、白水社、1980