2017年4月5日水曜日

【ご報告】本のカフェ第40回@恵比寿

日時:2017年4月2日(日) 13-15時
場所:カフェ カルフール
参加:5名+主宰者
参加費:1000円+ワンドリンク


いつもの恵比寿のカフェで春の読書会。今回は<小説>特集でした。


まずは主催者が小川洋子『不時着する流星たち』を紹介。起承転結のある物語ではなく、モチーフでモザイク模様を作っていくような短編集。インスピレーションの源が明示されているのも面白い。参考資料が豊富で、そこもよいところ。19世紀から20世紀に至る仏文学の歴史に照らして、起承転結の物語がなくなってゆく様と重ねたり、女性小説家が20世紀初頭まで厳しい状況に置かれていた話をV.ウルフを引き合いに出してしました。



二人目は、ゲーテ『ノヴェレ』と『吟遊詩人マルカブリュの恋』。ヨーロッパ旅行をしたときの写真(大判)やフランスの本屋さんで求めたぶ厚い本(トルバドゥールの詩集、楽譜もあり)をご用意いただきました。充実したレジュメも。『ノヴェレ』は詩や歌のもつ不思議な力(魔法でさえある)を描く。マルカブリュの方は彼の死を伝える巻物の謎をめぐる20世紀を舞台にした小説。どちらも詩や歌がテーマになっている。



三人目は、『大きな鳥にさらわれないよう』。川上弘美さんの最新作でSF小説。川上さんは大学では生物学を専攻し、SF研究会にいた。生物学の高校教師の経歴も持つ。今回は、ネタバレ全開で作品を通して説明し、そのうえで解釈や不明な点について踏み込んだ。人類の滅亡や人間の破壊衝動、神とはなにか、といったテーマが並ぶ。そこで、デビュー作の『神様』および3.11の後に書かれた『神様2011』も参照することに。謎は残る。


フリータイムでは、「久しぶりに小説の話をした」「学生時代以来だ」といった声も聞かれました。川上さんの小説について「マラルメが直面した詩の危機とも重なる」といったコメントも。また、「小説を読む/書く意味はどこにあるのか、なくても済んでしまう」「小説はどんどん読まれなくなっているジャンルでは」といった意見もあって忌憚のない話ができました。



ご紹介してくださったお二方、ご参加いただいたみなさま、応援してくださった方々、ありがとうございました。受付をお手伝いいただいたOさんには感謝しきりです。おかげさまで無事、和やかに楽しく終えられました。



主宰・文責:木村洋平
写真:Oさん、木村洋平