2017年12月23日土曜日

雨と木曜日(150)

2017.12.23

キリのいい回数になったエッセイ。
今回は、八月のクリスマス * ル・クレジオ『黄金探索者』* こそあどの森の物語『水の精とふしぎなカヌー』



クリスマスには不幸の影がある。と言うと世間のにぎわいに水を差してしまうが、ここ数年、心穏やかに過ごせたことがなく、年の瀬のせわしさも相まって落ち着かない。今年はただなにもないこと、家で600ページの原稿(編集業)をぱらぱらめくるうちに過ぎてくれることを願っている。

フォークナー作『八月の光』は、クリスマスという変わった名前の主人公の悲劇でもあるのだが、手厳しい「八月のクリスマス」はおしまいにしたい。

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ル・クレジオ『黄金探索者』を池澤夏樹の世界文学全集で読んだ。(解説もよいのです)。南の島で黄金を探す話だが、ぼくはプロローグとエピローグに当たる部分が好きだ。幼年時代を過ごす「ブーカンの谷」の牧歌的な風景、そこに羅列される外国の固有名詞の響き、それから最後の章で伝説的な土地「マナナヴァ」に、主人公の潰えてなお夜空へ昇る流れ星のような夢が託される。これらふたつのパートに挟まれて本編と言えるストーリーがあり、全体として物語をル・クレジオ流の純粋さへ高めている。

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2017年は、児童文学「こそあどの森の物語」シリーズ(岡田淳・作)が完結した年でもありました。

穏やかでやさしい作風。どのお話にもちょっとしたふしぎ、謎解きのようなファンタジーが仕掛けられている。作者の岡田淳さんが挿絵も描かれていて、これがまた和む。わくわくもする。

今日読んだ『水の精とふしぎなカヌー』は終わりから二番目の作品。さて、最終巻はどうなるのかな?